14-Step Synthesis of (+)-Ingenol from (+)-3-Carene
Jørgensen, L.; McKerrall, S. J.; Kuttruff, C. A.; Ungeheuer, F.; Felding, J.; Baran, P. S. Science 2013, Science Express. doi:10.1126/science.1241606
インゲノール(Ingenol)は抗ガン活性を持つ天然物の一種です。その誘導体インゲノールメブテート(商品名Picato)は、皮膚ガン(日光角化症)の薬として、ごく最近(2012年)米国FDAより医薬承認を受けています。
チャボタイゲキ(Euphorbia peplus)と呼ばれる植物からの抽出で供給されていますが効率は悪く、大量供給法が望まれる現状です。後述しますが、これは化学合成・生物合成いずれの立場からも非常に難しい課題とされています。
これに合成化学からの解決を図ったのが、世界の注目を集めるPhil Baran教授。Picato開発元の製薬企業LEO Pharmaとコラボし、この複雑化合物を僅か14工程で合成。大量化学合成への道を見事に拓きました。
純粋全合成がScience誌に載るのは大変珍しいですが、これほどの圧倒的成果であれば誰しも納得せざるを得ないでしょう。今回はこの成果について紹介してみます。