深夜、化学者なら誰でも妄想にふけることがあるでしょう。
「すべての分子の構造が目で見えたらなあ...」
もう少し、"リアルな妄想"でいえば、
「なんでも試料を結晶化出来る方法がないかなあ...」
目で見えるのはこれやこれなどいくつか報告されていますが、まだまだ実用的ではありません。しかし、後に述べますが、"きれいな単結晶"さえ作れれば理論的にはすべての分子を「目で見る」かのごとく扱うことができます。
さて本日、そんな妄想を実用的にするような、化学界に歴史的インパクトを与えるやも知れぬ驚愕の研究成果が、東大工学部の藤田誠・猪熊泰英らによってNature誌に報告されました。
X-ray analysis on the nanogram–microgram scale using porous complexes
Inokuma, Y.; Yoshioka, S.; Ariyoshi, J.; Arai, T.; Hitora, Y.; Takada, K.; Matsunaga, S.; Rissanen, K.; Fujita, M.
Nature 2013 doi:10.1038/nature11990
科学的に一言で述べるなら「非結晶性化合物のX線結晶構造解析を可能にした」という報告になります。
構造解析に携わる研究者であれば100人が100人、のどから手が出るほど欲しがる技術の一つである一方、その実現自体はにわかに信じがたいものです。
一体全体、どのような発想がこれを可能にしたのでしょうか?