望みの有機物が欲しい場合、普通は有機合成(Organic Synthesis)によって供給します。特に医薬品や高機能材料などに求められる複雑化合物を得る目的には、現状ほぼ唯一の手段といえます。
しかし一方、「全く新しいものづくり法」として注目を集める技術があります。それが合成生物学(Synthetic Biology)と呼ばれるものです。
もともとは遺伝子改変によって新たな生物を作り出すことを通じ、深く生物を理解するという目的ではじまった学問です。しかし最近では、任意の機能をもった生体システムを作りあげる研究も含めて呼称されるようになっています。
この合成生物学の発展により、遺伝子組み換え生物に自由自在・効率的なものづくりをさせてしまおうとする考え方[1]が一挙に現実味をおびてきています。ここ10年ほどで有機合成と対比的に捉えるような論調も目立つようになりました。
果たして将来の「ものづくり」はどちらの手法がメインストリームになるのでしょうか?
本記事では、合成生物学による「ものづくり」とその魅力を有機合成と対比しながら考えてみようと思います。