ケムステ読者様には釈迦に説法かもしれませんが、カラムクロマトグラフィーは化合物の極性とシリカゲル等のゲルとの相互作用を利用して分離する有機合成の研究室ならば必ず習得すべき、そして最も活躍する精製手法です。
一般的にはガラスの管に(カラム管)シリカゲルをいれて、貧溶媒で充填し(乾式法)、極性の異なる2種の溶媒をグラジエントをかけながら上から圧力をかけて流していき、薄層クロマトグラフィー(TLC)で分離を確認する。こういった感じでしょうか。研究室によって色々な方法があると思います。
最近ではこの作業を自動で行う「自動精製装置」も比較的おもとめやすくなってきましたね。一時期は人件費がかかる企業のみ使用されるものでしたが、最近では大学でも導入しているところもありますね。「カラムをやらないと合成の腕が上がらないぞ!」っといった議論は今回はやめましょう。
自動合成装置の代表的なものはバイオタージのIsoleraと山善のSmartFlashでしょうか。其々に特徴的で好き好きがあると思いますが、個人的にはIsoleraの方が好きです。ただし、精製には最低でも15分程度かかり、現役バリバリであれば順相(固定相の極性が移動相の極性より高い分離系)に限っては、自分の手でやったほうが早い場合が多いです。現役ならばです。実験からほどほど離れていると学生が増えて、実験台もなくなり、いないところで細々と実験をしなければならなくなり、カラムを立てる場所もなくなってきます。片付けも面倒です。逆相ならばちょっとやりたくないです。TLCもノートにメモらずこの辺だろ!というところを狙い撃ちして、溶媒も忘れてしまうことも。学生の皆さんは真似せずしっかり記録してくださいね。そんなときに活躍するのが自動合成装置。特別の場所も必要とせず、セットするだけで勝手に分けてくれます。腕も必要ないですね。溶媒系や分離の記録も電子データでしっかり残っています。
さて、前置きが長くなりましたが、そんな自動合成装置Isoleraの精製がソフトをバージョンアップするだけでなんと3分で終わるようになったという驚愕の情報を手に入れまして、早速リリース前にモニターしてみましたので報告させていただきたいと思います。かなり合成化学の現場の玄人向けの話になりますがご容赦を。