"Click"(カチッと音を立ててくっつく)という意味の英単語が表すとおり、「手軽に強固な結合をつくる高化学選択的・高収率・高速反応を使ったものづくり」を統合的に捉える化学がクリックケミストリーです。ノーベル賞受賞者でもあるK.B.Sharplessらによって提唱された概念ですが、その未来像と価値を示した総説[1]は既に5000回以上の引用数(2014年8月現在、Web of Science調べ)を誇っており、いまや途轍もない普及力を見せています。
アジド-アルキンの[3+2]付加環化(Huisgen環化)が代名詞的反応として知られていますが、もちろんこれ一つに道具を絞らなくてはならない理由はどこにもありません。例えばチオール-エン反応なども、クリックケミストリーに適した反応として近年盛んに活用されています。
さてつい先日、クリックケミストリーの枠を更に広げる道具としての硫黄-フッ素交換反応(SuFEx反応)の活用がSharplessらによって提案されました。今回はその総説[2]からかいつまんでご紹介しましょう。