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私がケムステスタッフになったワケ(3)
オンライン座談会『ケムステスタッフで語ろうぜ』第1回。3月20日あたりから4月10日あたりまでフェイスブックのケムステグループで交わされたやりとりです。テーマは「なぜケムステスタッフになったのか」。本音あり、脱線ありの、混沌としたこの企画。記事の内容は、ケムステスタッフの平凡なオンライン座談会を淡々と抜粋したものです。過度な期待はしないでください、ね。
企画「ケムステスタッフで語ろうぜ」の詳細はこちら、ケムステ記事「オンライン座談会『ケムステスタッフで語ろうぜ』開幕」をご覧ください。
長くなってしまったのでいくつか分割してお届けしています(第一回、第二回)。この記事は第三回で、メインの回答者は2人。両者とも大学で研究・携わる教員スタッフです。
なんだこの色は!光触媒効率改善に向け「進撃のチタン」
Attack on Titan? Attack on Titanium!
二酸化チタンと言えば、光触媒材料でおなじみ。金属チタンは製錬に手間がかかるためいくらか高価である一方、二酸化チタンはそうでもなく1キログラムあたりたかだか数十円で取引されており、そのため建築物の壁面塗装など大がかりな用途にも使われ、その真っ白な色彩が印象的です。
しかし、通常「光触媒」と言っても、エネルギーが高い紫外線でないとダメで、普通の可視光ではほとんどはたらきません。その元凶の一端が、すべての波長の光をはねかえすその白さにあり、というのは何とも皮肉でしょうか。
最近[5]になって、ひと手間の化学処理を表面に施すだけで、可視光を効率よく吸収して光触媒に使える特別な二酸化チタンの作り方が報告されました。その色彩は、驚くべきことに、真っ黒。すべての波長の光を吸収する闇のような黒にはどのような可能性がひそむのか、エネルギーの高い紫外線から、そうではない可視光へと進撃を続けるチタンの魅力に迫ります。
処理前の白い二酸化チタン / 処理後の黒い二酸化チタン
天然の保護基!
有機合成には必須と言っても過言でないもの、保護基!
反応性の高い官能基を不活性な形にしておくために保護基は使われるものです。
天然物の全合成(人工合成)と生合成(生物による合成)を比較するとき、保護基使用の有無について言及する人が多いと思います。
しかし、実は
天然の生合成でも保護基を使うことがあります。
’’A Natural Protecting Group Strategy To Carry an Amino Acid Starter Unit in the Biosynthesis of Macrolactam Polyketide Antibiotics’’
Yuji Shinohara, Fumitaka Kudo, and Tadashi Eguchi,
J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 18134–18137 DOI:10.1021/ja208927r
脳を透明化する手法をまとめてみた
読者の皆さまこんにちは。少し今回の記事はテイストが違うな?とお思いの方も多いでしょう。
というブログをご存知でしょうか。生物系の研究者であるぱんつさんが運営しているもので、そのハンドルネームからは想像できない文章力とトピックの面白さで最近大変人気を博しています。かくいう私も最近チェックをし始めた一人です。
今回、ケムステ用に化学に少しよせた記事を特別に寄稿して頂きましたので紹介させていただきたいと思います。
その、トピックは
脳を透明化する
です。ではどうぞ。
(以下寄稿記事になります)
先日Natureに「電気泳動で脳を透明化する」という論文が出て大きな話題になりました。実は脳を透明化する手法はこれが初めてではなく、以前から化学処理をすることで脳の透明化を達成化した論文がいくつ報告されています。一目瞭然、上図にあげた、3DISCO, Sca/e、そしてごく最近報告されたCLARITYという技術が現在の最先端技術です。
今回ここ2、3年で脚光を浴びている研究を振り返り、電気泳動手法の意義について再考してみたいと思います。
私がケムステスタッフになったワケ(4)
オンライン座談会『ケムステスタッフで語ろうぜ』第1回。3月20日あたりから4月10日あたりまでフェイスブックのケムステグループで交わされたやりとりです。テーマは「なぜケムステスタッフになったのか」。本音あり、脱線ありの、混沌としたこの企画。記事の内容は、ケムステスタッフのオンライン座談会を淡々と抜粋したものです。
企画「ケムステスタッフで語ろうぜ」の詳細はこちら、ケムステ記事「オンライン座談会『ケムステスタッフで語ろうぜ』開幕」をご覧ください。
これまでの第一回、第二回、第三回に続いて、この記事は4番目です。今回はメーカ企業で働くスタッフと天然物化学を先行する大学院生スタッフです。
TBSの「未来の起源」が熱い!
これからの日本の科学技術を担う若手研究者。雇用問題についての議論などは多数あっても、実際に彼らが何を思って研究を続けているのか、生の声に触れる機会はなかなかありません。
4月7日、そんな若手研究者たちを紹介する番組が新しくはじまりました。
反応がうまくいかないときは冷やしてみてはいかが?
最近の冷凍食品はたいてい美味しいですよね。
私が子供の頃は、冷凍食品と言えば「あんまり美味しくないたべもの」の代名詞でした。
これも冷凍食品会社さんの努力の賜ですね。
最近の美味しい冷凍食品たち。写真と本文は直接関係ないですが、美味しそうな物をあげてみました。
さて、冷凍して食品が保存されているのは、低温下であるため、様々な化学反応(例えば食べ物が傷む、腐るなど)がほとんど進行しないからだと思いますが(もちろんそれだけではないです。念のため。)、一方で凍結下で反応を進めてしまおうと考える人々もいたりするんです。
クリック反応の反応機構が覆される
いわくアルキンは銅イオンで両手に花!そこにアジドが登場
コンピュータマウスをカチッとクリックするかのように狙い通りの組み合わせで確実に起こる化学反応を活用するクリックケミストリー。この分野を代表する代名詞とも言える存在がヒュスゲン環化反応です。
このヒュスゲン環化反応に、従来とは別の反応機構を提案するに至る証拠が、新たに提示されました。ヒュスゲン環化への理解が深まり、反応法のさらなる改良につながると期待されます。
高分子と高分子の反応も冷やして加速する
先日、冷凍食品を見ながら思いついたようにつぶやいた”凍結”反応ですが、よく調べてみると、他にも面白い論文が昨年報告されていました。
反応性が高いから冷やすのではなく、熱い二人を冷やして近づかせるChemistry。良いもの作れますよ!
もし新元素に命名することになったら
理化学研究所が113番元素の合成に成功したとの報告がなされ、命名権が与えられる事はほぼ確実と思われます。ジャポニウム(Jp)?ニッポニウム(Nn)?それともリケニウム(Rk)?、大穴でニシニウム(Ns)でしょうか。
個人的にはJが付く元素が無いのでジャポニウム推しです。いずれにしても我が国初の命名がなされる元素なので、今からワクワクしています。
学振申請書を磨き上げる11のポイント [文章編・前編]
GWも終わりました。院生の皆さんは、そろそろ学振(DC1/DC2/PD)の応募書類作成に焦り始めるころでしょうか。
筆者は大学に勤務しはじめて数年経ちますが、所属ラボのメンバーは、とてもアクティブに学振申請をしています。毎回多くの添削も依頼され、そのたび直してコメントを付けて返しています。
この作業、相当に時間を食うのです(一回3時間以上かかることも)が、繰り返すことで自分にも様々なノウハウがたまってきました。まさに「learnig by teaching」です。
そんな添削経験からいえることですが、「書き方(文章作成のコツ)」を知っているか否かは実に重要です。内容が同じでも、申請書としての完成度に明らかな差が出てきます。さらに沢山見ているうちに、「多くの学生が押さえられていない基本」もあると思えてきました。それを知らないままに取り組むのはもったいない!
そこで今回は情報共有も兼ね、「申請書を論理的に、分かりやすく仕上げるための文章校正ポイント」を解説してみたいと思います。
学振申請書を磨き上げる11のポイント [文章編・後編]
引き続き、学振申請書を論理的に、かつ分かりやすく仕上げるための文章校正ポイントを紹介します。(前編はこちら)
ハニートラップに対抗する薬が発見される?
スパイと言えば007ですよね。イケメンのスパイと美女が欠かせません。ジェームスボンドは謎の美女に手痛い目にあわされることが多いです。そう、実はその謎の美女は敵方のスパイだったなんていう展開はある意味でお約束となっています。
ボンドでなくても、世の殿方はおしなべて美女には弱いのがサガというもの。麗らかな女性に言葉巧みに言い寄られたら、ついつい秘密をしゃべってしまったり、大事な商談に失敗してしまったり、そうハニートラップに引っかかってしまうのです。
嘘か真か:ヒトも重水素化合物をかぎわける
毎日のように有機溶媒を扱っていると、それぞれの匂いで、どれが何だか分かってしまうようになります。匂いごと、意外と好き、好きでも嫌いでもない、耐え難いほど嫌いなど、ひとそれぞれこのみもあるでしょう。似たり寄ったりの化学構造であっても、確かにかぎ分けてしまうとなると、鼻という器官はたいしたものです。
いったいヒトはどこまで匂い分子を識別できるのでしょうか。かねてから議論になっていた重水素化合物の区別が、ヒトでもできるという実験結果が発表[1]されたので紹介します。
私がケムステスタッフになったワケ(5)
オンライン座談会『ケムステスタッフで語ろうぜ』第1回。3月20日あたりから4月10日あたりまでフェイスブックのケムステグループで交わされたやりとりです。テーマは「なぜケムステスタッフになったのか」。本音あり、脱線ありの、混沌としたこの企画。記事の内容は、ケムステスタッフのオンライン座談会を淡々と抜粋したものです。
企画「ケムステスタッフで語ろうぜ」の詳細はこちら、ケムステ記事「オンライン座談会『ケムステスタッフで語ろうぜ』開幕」をご覧ください。
この記事は5番目です(時間が空いてしまってすみません)。
リサーチ・アドミニストレーター (URA) という職業を知っていますか?
突然ですが,みなさんはリサーチ・アドミニストレーター (URA) という仕事をご存じですか?ちなみに筆者は,つい先月公募を見て初めて知りました.何だこの職種は??と思って,Wikipediaで調べてみると…
優れた研究者は優れた指導者
よく耳にするタイトルのフレーズですが、優れた研究者は優れた教育者。
先日、実感するエピソードを聞きましたのでご紹介します。
雷神にそっくり?ベンゼン環にカミナリ走る
ベンゼンテトラアニオン誘導体の合成に成功,芳香族化合物の理解 深まる.
日本を代表する絵画のひとつ、江戸時代の画家である俵屋宗達による代表的作品「風神雷神図屏風」。ふと思い起こして、見比べてみると、あら不思議。フェロセンが太鼓にも見えるし、手足の指も5本ずつだし、これはネットスラングで言うところの 完 全 に 一 致 というやつでは。そっくり!?
冗談はさておき。この「雷神分子(仮名)」の胴体にあたる中央の炭素六員環にご注目。金属元素のイットリウムに挟まれて、よくよく考えてみると電荷がおもしろげなことになっています。テトラアニオン(四価陰イオン)になっており、数えてみるとパイ電子はちょうど10個です。10は4で割り切れないため、ヒュッケル則を満たすことになりますが、はてさて実際に作って調べてみると芳香族になるのでしょうか。
ベンゼンテトラアニオン
ベンゼンテトラアニオンは芳香族性を持つのか、合成・単離・結晶構造解析の結果[1]はいかに?
奇妙奇天烈!植物共生菌から「8の字」型の環を持つ謎の糖が発見
前代未聞の炭素骨格を持った機能未知の単糖「ブラジリゾース」
糖の構造と言えば、高校生のときに、これだけは覚えろと言われ、グルコースなど無理矢理に暗記した思い出も、今は昔。ひもつけて理解すれば大したことないのですが、なかなか難儀であった記憶がおぼろげにあります。あれれ、ヒドロキシ基の向きはどっちでしたっけ?
糖、とくに単糖と言っても、自然界には何十種類とあるわけですが、ヒドロキシ基の向きなんてささいなことではない、奇妙奇天烈な炭素骨格を持つ糖が、植物共生菌ブラジリゾビウム(Bradyrhizobium sp.)から、発見されました[1]。その名もブラジリゾース!