ケムステ読者の皆様はDHMOという物質をご存知ですよね。DHMOはジハイドロジェンモノオキシドの略です。これは大変危険な物質とされていて、酸性雨の主成分であったり、温室効果を引き起こすなど環境問題でしばしば取り上げられたかと思えば、悪性腫瘍に含まれていたり、強力な毒素を作り出す微生物の増殖を促進したり、はたまた福島第一原子力発電所では放射性物質を含んだものが検出されるなど、人類の脅威の場で必ずと言っていい程登場します。
ケムステ読者の皆様はDHMOという物質をご存知ですよね。DHMOはジハイドロジェンモノオキシドの略です。これは大変危険な物質とされていて、酸性雨の主成分であったり、温室効果を引き起こすなど環境問題でしばしば取り上げられたかと思えば、悪性腫瘍に含まれていたり、強力な毒素を作り出す微生物の増殖を促進したり、はたまた福島第一原子力発電所では放射性物質を含んだものが検出されるなど、人類の脅威の場で必ずと言っていい程登場します。
わたしはDDTが大好きです!
「タデ喰う虫も好きずき」の諺にもあるとおり、苦かろうと、渋かろうと、そして毒があろうと、それを好き好んで食べたり集めたりする生き物は存在します。例えば、フグの体内に含まれるテトロドトキシンは食料となる海底生物に由来していると考えられていますが、フグにはテトロドトキシン入りの餌を選り好みする性質が確認されています。
それでは、このような天然毒ではなく、人工の化学合成した分子だけを選り好んで集める生き物はいるのでしょうか。
ぶんブブン!
はいの返事がありました。実は、DDTが大好きな蜂が、世界には存在します。
天然から発見された有機化合物には、2つの同じ(もしくは似ている)ユニットが結合したような構造をもつものがたくさんあります。これらは二量体(型)天然物(dimeric natural products)と呼ばれ、2004年に行われた調査では、約3000報に登る天然物に関する論文のうち、およそ17%が二量体天然物に関するものだったそうです [1]。こういったものは構成パーツが同様でも、結合パターンの違いによって、実に様々な生物活性を示すことが知られています。つまり二量体天然物合成法の開拓は、これら膨大な化合物群に関する理解を得るための、有効なアプローチになるのです。
さてこのたび、難関二量体天然物の一種であるBE-43472Bの全合成が東京工業大学の鈴木・瀧川らによって達成されました。2009年にNicolaouによる全合成[2]が報告されて以来、2例目の全合成になります。
“Total Synthesis of the Antibiotic BE-43472B”
Yamashita, Y.; Hirano, Y.; Takada, A.; Takikawa, H.; Suzuki, K.*
Angew. Chem. Int. Ed. 2013, DOI: 10.1002/anie.201301591
6月なので6にちなんで、原子番号6番、炭素Cにまつわる「6」の話を記事にしたいと思います。
炭素原子と言えば結合を作る手は4本だということは、理科好きならば中学生でも常識扱いされる有名なことかもしれません。4本しか手がないのであれば、4よりも多くの方向へ結合の手がのびることはなさそうです。
しかし、特別な場合には「炭素原子が6方向に結合の手をのばす分子」もあるのです。しかも、それが実験室で作った人工の合成物だけでなく、生き物が作った天然の化合物にもあるというから驚きです。
さて、今年もこの季節がやってきました。Reaxys Ph D Prize ファイナリストの発表です。博士課程の学生もしくは博士取得後1年以内の方に与えられる、主に有機化学分野での国際賞。今回、で4回目になりますが、これまでもケムステではReaxys Prizeを応援してきました(これまでの記事は関連記事参照)。なぜなら世界中の腕に覚えある超若手化学者が応募する賞であるからです。数十年後の世界の化学を牽引する化学者がいるかもしれません。そう思うとドキドキしますね。今回は前回(350人)をはるかに超える580人が応募し最後の3人に選ばれる45人が決定しました。日本人を中心に紹介してみたいと思います。
暑い季節になりました。そろそろビアガーデンに行き始めた読者もいることでしょう。というわけで、今回はAngewandte Chemie International Editionに掲載された、ビールに関わる論文 [1] を紹介したいと思います。
こちらのケムステニュースでもお伝えした通り、今月初旬に待望の化学構造式描画アプリChemDraw及びChem3DのiOS版がリリースされました。構造式描画アプリは今まで幾つかありましたが、やはりデスクトップPCで慣れしたしんだソフトの方がスムーズな使用感やPCとの連携も期待できるので待ち望んでいた方も多いのではないでしょうか。
しかし、残念ながら未だに日本ではダウンロードする事ができず、待ちぼうけをくらっている状態です。いずれはリリースされるとは思いますが、どうにもがまできなかったので、米国から入手しましたので人柱となるべく、週末の宿題代わりにレビューをポストしたいと思います。
だいぶ間が空いてしまいましたが、前回の続き。国外の貴金属取扱いメーカを紹介して業界の全体像を探ってみましょう。
塩はどの家庭にも置いてある身近な化学物質です。小学校の理科でも塩の主成分が塩化ナトリウムであることは教えます。そんな身近な塩化ナトリウムではありますが、さてどれだけ塩化ナトリウムのことを普段気にかけていますか?
我が国では昔から塩は神事や仏事に用いられるなど、神聖な意味合いを持つことも少なくありません。店舗の玄関には塩を盛っておき、商売繁盛のげんをかついだりします。様々な場面で登場する身近な”塩”にスポットを当てることにして、少しだけ塩化ナトリウムのことを掘り下げてみたいと思います。
6月も終わりが近づいてまいりました。雨は多くなるし、暑くなるし、有機合成のやりにくい季節ですね。
最近、天然物合成の記事が減ってきたように思いますので、私が印象に残っている天然物の合成をいくつか紹介させて頂きたいと思います。
昨年秋に近況報告をさせていただきました。色々溜まりすぎて、雑多な話題になってしまいますが、ケムステ代表の8ヶ月ぶりの近況報告です。最近スタッフも少し忙しいので記事もすこし減少気味。でも化学者のつぶやきなんでなにを話してもいいのです。それでは夜も更けて朝日が見えたこの時間のテンションで近況報告です(執筆時)。
さて皆さん上図をごらん下さい。これらは少し前に報告された触媒反応[1a,1b]のグラフィカルアブストラクトです。ほぼ同時に投稿されているうえ、触媒系にもさほど違いがありません。
こういう事態が起こると外野からは「どっちがどっちをパクったの?」「どっちにレフェリーが回ったの?」と安直に言及されがちです。
しかしあえて言おう・・・「ほとんど独立に取り組んだにも関わらず、全く同じ条件に行き着くケースは、超一流の研究領域ではありえるのだ」と!
気ままに有機化学さんでも「世界同時多発研究」と称して紹介されていますが、こういうことは実際少なくないのです。以前紹介したこの例なんかも、その一環と捉えられるでしょう。
今回はどうしてこんなことが起こったのか、研究背景を押さえながら推測してみたいと思います。
~4月某日、ある有機合成系研究室の一場面~
院生A: と、いう様に分液操作で後処理をしたら硫マグで乾燥させるんだ
4年配属生B: なるほど、この後はどうするんですか?、先輩
院生A: 入れた乾燥材をろ過してエバポだね
4年配属生B: 抽出溶媒を除く訳ですね
院生A:そ う、そしてカラム精製だ。
4年配属生B: ありがとうございます、やり方は?
院生A: 移動相はRf 値-に調製して、精製しようとする量の-倍のシリカゲルを適当なカラム管に詰める
4年配属生B: はい
院生A: 表面を荒らさない様に、粗生成物をトップに乗せて移動溶媒を注ぎ、試験管に分取する
4年配属生B: カラム径選択の基準は?どの位の量ずつ分取して何本目に出て来るんですか? 溶媒はどの位用意するんですか?移動相の流速は?詰め方は?
院生A: ウデと経験だね…
4年配属生B: そうなんですか…仕込んだ反応の時みたいに参考文献とかないんですか?
院生A: う~~ん、この部屋のやり方はこれだから
4年配属生B: ハイ、がんばります!!
はい、どうも、Kです。7月に入り4年生も研究室生活になじみつつありますが、先日まで上の様な光景が目の前で繰り広げられていました。そこで備忘録も兼ね、主に合成実験で用いるカラムクロマトグラフィーについてまとめてみたいと思います。
"文章力は経験では上達しないのです"
最近刊行された『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』(倉島保美 著)は、「論理的文章を書くための黄金律」であるパラグラフ・ライティングの基礎から実戦までを、徹底的に分かりやすく解説した書籍です。
今回は本書のエッセンスをもとに、パラグラフ・ライティングについて紹介してみたいと思います。
(図は文献2より引用)
ポリオレフィンやポリエステルといったプラスチックは安定性が非常に高いため、使い捨て容器やPETボトルなどとして幅広く利用されています。しかし、「安定性が高い」ということを言い換えれば「分解されにくい」ということになります。そのため、自然界に残存したプラスチックが環境汚染の原因となったり、リサイクルしにくかったりといった欠点があります。
しかし、しかし。化学の力は、「自在に分解できる高分子」といったちょっと変わったプラスチック=ポリフタルアルデヒド=Poly(phthalaldehyde)を実現してしまうのです。今回は、そんなポリフタルアルデヒドに関する最近の論文をご紹介します。
[1] Reproducible and Scalable Synthesis of End-Cap-Functionalized Depolymerizable Poly(phthalaldehydes)DiLauro, A. M.; Robbins, J. S.; Phillips, S. T.*Macromolecules 2013, 46, 2963-2968. DOI: 10.1021/ma4001594
[2] Stimuli-Responsive Core-Shell Microcapsules with Tunable Rates of Release by Using a Depolymerizable Poly(phthalaldehyde) MembraneDiLauro, A. M.; Abbaspourrad, A.; Weitz, D. A.; Phillips, S. T.*Macromolecules 2013, 46, 3309-3313. DOI: 10.1021/ma400456p
行事名: 第7回日本化学会東海支部若手研究者フォーラム「分子科学のライジングスター」
主催: 日本化学会東海支部
協賛: Chem-Station
開催日時: 2013年7月17日 13:30〜18:00
会場: 名古屋大学 野依物質記念館2F講演室
招待講演: 13:40〜15:00 大宮 寛久 先生 (北海道大学大学院理学研究科・准教授)
15:10〜16:30 神谷 真子 先生 (東京大学大学院医学研究科・助教)
16:40〜18:00 猪熊 泰英 先生 (東京大学大学院工学研究科・助教)
懇親会: 講演会終了後参加者と講演者との簡単な懇親会(無料)を行います
参加申込方法: 問合先に所属と参加者名、参加人数をメールにてお知らせください。
参加費: 無料
申し込み先・問合先:462-8602 愛知県名古屋市不老町 名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻(化学系)
山口潤一郎 E-mail: junichiro@chem.nagoya-u.ac.jp
7月になり、どんどん蒸し暑くなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか?
大学院生時代に先生方によく言われたのは、
<晴れの日の場合>
「今日は『実験日和』だ。バリバリ実験しなさい」
<雨の日の場合>
「雨でどうせ遊びに行けないんだから、バリバリ実験しなさい」
……蒸し暑いですが、とりあえず皆様元気よくやっていきましょう。
今回はWoodwardらによるErythromycinの全合成 1-3)を紹介します。
「ナノってなんナノ?」
と冒頭からしょうもないオヤジギャグですいません。
でも、結構身近にナノ○○なんて言うものは沢山転がっているので、専門家でなくとも耳にしたことがある言葉でしょう。
まあ、ナノと名付けなくても良さそうなものもありますが、そもそも、ナノとは「10のマイナス9乗」を表す言葉です。
まあそれくらい小さい世界のものだと言うことです。
ということで、”ナノ"と頭につく名前の材料で、日本発(たぶん?)のものを、私の主観で集めてみました。
有名ハンバーガー店のMcDonaldはなんて呼びます?
マック?マクド?
よくある論争ですね。でも海の向こうじゃどっちも通じません。マクダーナウと言えば通じやすいと思います。
時間を聞きたい時は?
ワットタイムイズイットナウではなく、掘った芋いじくるな!が定番です。
今をときめく日本発の人気キャラ ポケモン(Pokemon)はポ キモンがいいでしょうね。
そうなんです。英語での発音はカタカナ読みとは少し、いやかなり違います。
ケムステでも化学研究ライフハックと称し、様々な情報処理ソフトウェアを紹介してきました。
しかし実験科学者のクリエイティビティが遺憾なく発揮されうるのは、むしろハードウェア(実験器具)のほうではないでしょうか。
例えば「このガラス器具、こういうところを工夫すればもっと使いやすくなるのになぁ・・・」といった現場視点の細かなニーズ、誰しも一つや二つ持っているはずです。
しかしこれを具現化する段になると、途端に難しくなってしまう。ガラス製・ポリ製・金属製である実験器具の加工は、素人では手が出せません。仲良しのガラス工のおっちゃんに頼んで作ってもらう、ぐらいがせいぜいでしょうか?
いずれにせよ「実験器具を自作する」という選択自体、技術面でも設備面でもハードルが高く、現実的ではありません。ともかく既成品を買って使う、オーダーメイドしてもらうという選択肢しか事実上ないわけです。
しかし現代では、どうやら少しづつこれが様変わりを見せているようなのです[1]。