ついに今週末。ケムステも科学の祭典「サイエンスアゴラ2013」の開幕です。今回の記事では、ケムステブースの内容を、ズバッとお伝えします。サイエンスアゴラ2013ケムステブース3つのみどころとは?
開催間近!ケムステも出るサイエンスアゴラ2013
サイエンスアゴラの魅力-食用昆虫科学研究会・「蟲ソムリエ」中の人に聞く
今週末9日(土曜日)・10日(日曜日)に日本科学未来館で開催されるサイエンスアゴラ2013出展について、食用昆虫科学研究会にインタビューし、ウェブサイト『蟲ソムリエへの道』中の人からご回答をいただきました。日本コンピュータ化学会の本間先生、日本タンパク質構造データベースの工藤先生、京都大学物質-細胞統合拠点iCeMSの水町先生に続き、インタビューは4回目です。
・展示・実演・説明 型 出展 Aa-088 昆虫食を科学する~国連が認めた食料~
・シンポジウム・トーク型 出展型出展 Ab-616 国連が薦める昆虫食~昆虫を食べる時代がついにやってきた~
ウェブサイト『蟲ソムリエへの道』中の人は、普通に料理しても、昆虫を使って料理しても、さすがの腕前で、ひそかに評判です。新しい時代の昆虫食を社会に役立てるため、活発にご活動されています。今回、食用昆虫科学研究会でのご活動と熱意のほどを紹介くださいました。それでは、実際にお話をどうぞ。
透明なカニ・透明な紙:バイオナノファイバーの世界
11月6日、今年もカニ漁が解禁されました!
カニといえば硬い殻で覆われた姿を想像すると思います。一見するとプラスチックのように見えますが、実は多糖類の繊維の複合体(キチン質)でできています。主成分となるキチンは、おおざっぱにいえば紙などに代表されるセルロースと同じような分子構造です。
食べたら捨ててしまうカニの殻やそこらへんにあふれている紙、これらは再生材料として大いに注目されています。そこで今回はキチンとセルロース、バイオナノファイバーについて書いてみたいと思います。
軽量・透明・断熱!エアロゲルを身近に
エアロゲルって知っていますか?80年以上前に始めて作製され、[1] さまざまな特徴をもつ物質です。装置などの面で作製のコストが高く、目にしたことがある人は滅多にいません。インターネットで情報を見たことだけある、という読者も中にはいることでしょう。
しかし最新技術を使えば、エアロゲルは(頑張れば)特別な設備なしで作れてしまうのです!今回はそんな材料、私の研究テーマのひとつでもあるエアロゲルについて書いてみたいと思います。
科研費の審査員を経験して
科学ボランティアは縁の下の力持ち
兄貴達と化学物質
Extreme様コモンズ素材引用("超兄貴~聖なるプロテイン伝説"より 「サムソン」) サイトはこちら → ●
時々目にする筋骨隆々の彼ら。一体何をどうしたらこんなにマッスル化するのでしょうか。今回は化学物質の面からその中身について調査してみました。
生理活性物質? 生物活性物質?
最近めっきり時間の取れなくなったcosineです。今回は薬学系ならではの短めエントリを。
医薬と関わる世界にいると、「生物に効果を与える化合物」にものすごく沢山出会います。これをひっくるめて一般には何と呼んでいるでしょうか。「医薬」ではありません。なぜなら「毒」も含まれるからです。
「生理活性物質」と呼ぶ人が多いと思います。しかし一方では、「生物活性物質」と呼ぶ人もいます。
いやいやどっちも変わんねーじゃん?と思うかも知れません。
しかし実情は少し違います。
アントンパール 「Monowave300」: マイクロ波有機合成の新武器
反応がなかなか進まない!もっと即座に反応を終わらせたい!力ずくでもなんとかしたい!
そんな貴方にぴったりな反応装置があります。過激な?反応条件で反応を最速で終わらせることが可能なマイクロ波合成装置です。言わずと知れた現在では研究室に1台は「あったらいいな」的な存在になりました。筆者の研究室でもバイオタージの「initiator」にお世話になっています。他にもマイクロは合成装置はいくつか製品化されており、使ったことがありますが、initiatorの手軽にできる操作性と信頼性に勝てるマイクロ波合成装置はないと思っていました。
今回は、バイオタージの牙城を崩すことができる可能性のある新しいマイクロ波合成装置
をご紹介したいと思います。
~祭りの後に~ アゴラ企画:有機合成化学カードゲーム【遊機王】
JEOL RESONANCE「UltraCOOL プローブ」: 極低温で感度MAX! ①
化合物の構造決定には欠かせないNMR(核磁気共鳴分光法)。特に有機化学に関係する学生、研究者ではなくてはならない分析機器であるのは言うまでもありません。ただし、NMRは実は最も感度の悪い分析法の一つなんです。
特に13C-NNR。そもそも炭素の同位体のうち1%ほどしかない原子量13の炭素をみているのだから当たり前かもしれませんが、
サンプルの量が少なすぎて1H-NMRはとれたけど、13C-NMRがとれないよ!
4級炭素が全く見えないよ!
構造を解析するためにHMBC, HMQCなど測定したいだけど、時間がかかりすぎる
などなど、副生成物の同定しかり、さらには最近精密有機合成が増えていますので、世界中で微量サンプルのデータ収集の際に毎回苦労している研究者の姿が思い浮かびます。
そんな皆さんの不満を解決するのは、「極低温プローブ」と呼ばれる、NMR感度を飛躍的に向上させることのできる技術。
今回は、2回に分けて、JEOL RESONANCE社が開発している極低温プローブ
を紹介したいと思います。
触媒のチカラで不可能を可能に〜二連続不斉四級炭素構築法の開発
有機化合物にはその骨格中に連続不斉炭素を有する化合物が数多く存在します。その中には不斉四級炭素と呼ばれる四つの異なる炭素置換基を有する不斉点が連続した構造を持つものも多くみられます。そのため、多連続不斉四級炭素を効率的に構築する方法の開発が強く望まれていますが、その実現は現代の精密有機合成を以ってしても困難を極め、最高難度の課題に位置付けられています。
今回、名古屋大学の大井・大松らはパラジウム錯体を触媒とする不斉環化付加反応による二連続不斉四級炭素構築の実現に挑み、独自の分子構築のアイデアと配位子設計"ion-paired ligand"[1]を駆使することによって見事につくり上げることに成功しました。
Ligand-enabled multiple absolute stereocontrol in metal-catalysed cycloaddition for construction of contiguous all-carbon quaternary stereocentres
Ohmatsu, K.; Imagawa, N.; Ooi, T. Nat. Chem. 2013, ASAP. DOI: 10.1038/nchem.1796
本記事では、連続不斉四級炭素の構築法の概要と、論文著者へ開発秘話や苦労話などお聞きしましたので紹介したいと思います。
生物に打ち勝つ人工合成〜アルカロイド骨格多様化合成法の開発
植物は人間にとって生物活性を有する化合物など多用な分子を創出します。その創出においては、生物の反応場かつ触媒である酵素が活躍することで綿密な分子の作り分けと分子の多様性をもたらしています。その様子は、様々な有用な合成反応が開発されている今日でも非常に精巧であり驚嘆に値するものです。アルカロイドと呼ばれる生物活性分子群はその代表的な例であり、長年にわたる研究により様々な分子の生物の合成経路(生合成)が明らかとなっています。一見複雑かつ全く違う分子にみえても、同じ出発物質(中間体)から合成されていることが多いのです。
この度、北海道大学の大栗、及川らはアルカロイド生合成の経路をフラスコ内で模倣して、同じ中間体から一挙に5種類の化合物群の作り分け(骨格多様化合成)に成功しました。
Biogenetically inspired synthesis and skeletal diversification of indole alkaloids
Mizoguchi, H.; Oikawa, H.; Oguri, H. Nat. Chem. 2013, ASAP. DOI:10.1038/nchem.1798
本記事では、研究対象となったアルカロイド生合成経路の説明から実際の骨格多様化合成法に加え、代表著者である大栗博毅准教授にインタビューしましたので併せて報告したいと思います。
英語発表に"慣れる"工夫を―『ハイブリッド型報告会』のススメ
化学会年会では、今年から口頭発表Bが「英語推奨」になりました。この決定を受け、各所で議論が起きているようです。
ことさら述べるまでも無く、日本人は総じて英語がニガテ。筆者も例外では無く、苦労に苦労を重ね現在に至っています(→留学時に編み出した工夫)。
しかし今後の時代潮流を考えると、英語での発表スキルは習得不可避だとも思えます。教育側としては、この現実にどう対応していけばいいのでしょうか。
筆者個人は、英語の使用に「慣れる」環境作りがまず重要と考えます。
日本化学会と対談してきました
パーソナライズド・エナジー構想
エネルギー問題は人類全てが解決を希求する課題の一つ。世界の頭脳によって様々な対策が模索され続けています。
中でもハーバード大学・Daniel Nocera教授によって提唱されたパーソナライズド・エナジー構想 (Personalized Energy, PE)[1,2]は、ひときわユニークな輝きを放つものです。
構想の要を一言で表すと、「太陽光エネルギーの運用を個人レベルで行う社会」になります。大変興味深い提言ですので、今回はこれを取り上げてみたいと思います。
JEOL RESONANCE「UltraCOOL プローブ」: 極低温で感度MAX! ②
前回の記事で、株式会社JEOL RESONANCEの開発している「UlrraCOOLプローブ」を紹介するにあたり、基本知識について紹介させていただきました。例えば、NMRの利点と問題点、感度をあげるためのプローブの開発の試み、UltraCOOLプローブの名前の由来、極低温にするとどうして感度があがるのだろうか?などです。今回の記事では実際、UltraCOOLプローブの謎に迫っていきたいと思います。
祝100周年!ー同位体ー
原子ってなんだろう?原子の構造はどうなってるんだろう?
高校の化学の教科書のはじめにはだいたいこんなトピックスがありますよね。そして同位体とは何かについての記述も必ずあります。
でも我々人類が元素に同位体が存在する事に気づいて実はまだたった100年しか経ってないことはご存知でしたか?
サーモサイエンティフィック「Exactive Plus」: 誰でも簡単に精密質量を!
研究室に置いてあるGC-MSやLC-MSのような質量分析装置(mass spectrometer, MS)は大型機器室に置いてあるような大型MSと比べてコンパクトで使いやすいですが、未知化合物の組成式を精密質量から推定することは困難です。
装置のスペック上、整数質量から合成確認することがせいぜいです。研究生活ではNMR等では決定しきれない未知化合物が日々作りだされます。
「未知化合物の組成式を推定できれば研究が進むのに、GC-MSのデータでは組成がわからない!」
このような問題、ありませんか?
そんな問題を解決する装置「EXACTIVE」がサーモフィッシャーサイエンティフィック社から販売されています。EXACTIVEが開発されるまで、「研究室に置けるサイズの高質量精度MSは存在しなかった」のです。そして、質量精度が高いMSは日々の研究に必要不可欠です。今回はこのEXACTIVEについて紹介させていただきます。
【書籍】「ルールを変える思考法」から化学的ビジネス理論を学ぶ
著者の川上量生氏は、ニコニコ動画創設者であり、ドワンゴ社の代表取締役会長。先日「新卒就活に受験料を課す」と発表したことでも話題を呼びました。
当人は京大工学部卒、実は量子化学計算を専門にしていたらしい。はたまたジブリに弟子入りした経験まで持つという・・・。
「なんだそりゃ、そんな面白い人なのか!」と思い、最近発売された本書を買って読んでみたところ、期待に違わず大変面白かったワケです。思考がありきたりで無いのはもちろん、レベル高いこともきっちり押さえた上でシビアに先を見すえる姿勢がともかく素晴らしい。
一見化学と関係ない書籍をなぜこの「つぶやき」で取りあげるかというと、本書に載ってた「エネルギー遷移図を使ったビジネス理論」が、筆者にとってあまりにスマートヒットしたからです。これは紹介せねばならない!・・・と思いました。