近年の合成化学や各種分析手法の隆盛により、化学の力で分子を組み立てることは昔に比べて容易になりました。現在の合成化学の潮流はより直感的に簡単な部品から分子を組み立てられるか、に移っています。そういう観点からみると、分子をつくることは未だ「容易」という一言で片付けられるものではありません。
一方で、どこから手をつけて良いのかわからず全く太刀打ち出来ない分子もまだまだ存在します。「最難関分複雑分子」とでもいいましょうか。そのような分子を合成するには無限に存在しうる合成経路のなかから、あるコンセプトに従い合成経路を絞り込む必要があります。久々にそんな分子、合成経路を最近目にしましたので紹介させていただこうと思います。
先日、東京大学大学院薬学研究科井上将行教授らよって報告された最難関複雑分子の一つであるリアノドールの全合成です。
Total Synthesis of Ryanodol
M. Nagatomo, M. Koshimizu, K. Masuda, T. Tabuchi, D. Urabe, M. Inoue, J. Am. Chem. Soc. 2014, DOI 10.1021/ja502770n