日本語で得る学術情報 -CiNiiのご紹介-
究極の黒を炭素材料で作る
歴史にも残っていないような遠い昔、かつて人類が火を手にしたとき、わたしたちは煙のススとともに、炭素の黒を目の当たりにしたはず。そして、ときは21世紀、人類が到達した究極の黒は、やはり同じくあの炭素でできていました。人類はどこまで完全なる黒に近づくことができたか、その決め手は森のように垂直に並べたカーボンナノチューブにありました。
図は論文[1]より
化学エンターテイメント小説第3弾!『ラブ・リプレイ』
未来の化学者たちに夢を
ケムステをご覧ということは皆さんはある程度化学に興味がおありなわけですよね。では皆さんが化学に興味を持たれたのはいつ頃ですか?はっきりとは答えられなくても、何らかのきっかけがあったんではないかと推察します。それは素晴らしい先生との出会いであったり、両親の影響であったり、もしかしたらマンガの影響だったりするかもしれません。何でもいいんです。
BASFとはどんな会社?-2
ムギネ酸は土から根に鉄分を運ぶ渡し舟
アルドール・スイッチ 〜Aldol-Switch〜
ポリフェノールの一種であるresveratrolに食品アレルギー予防効果があるという記事を先日ケムステニュースで紹介しました。
ケムステニュース 「ポリフェノールに食品アレルギー予防効果」
ところで、このresveratrol、植物ではどのように生合成されているのでしょうか?
今回は、resveratrol生成に関わるstilben synthase(STS)の反応機構について紹介してみたいと思います。
触媒討論会に行ってきました
9月の24日から26日まで九州大学伊都キャンパスで開かれていた「第110回触媒討論会」略して「触討」に行ってきましたのでそれについて報告させていただきます。
2012年イグノーベル賞発表!
(写真:ctpost.com)
今年もやって参りましたノーベル賞シーズン!
前哨戦としてこの時期には毎年、ジョーク版として名高いイグノーベル賞が発表になります。受賞対象は"first make people LAUGH, and then make them THINK"――すなわち、まず笑わせ、そして考えさせてくれる研究。ユーモアたっぷりであるのはもちろんのこと、一方では実におおっと唸らされる研究でもあるわけです。
日本人が常連受賞していることもあってすっかり有名になった賞ですが、今年も邦人が「音響学賞」を受賞!なんとこれで6年連続受賞だそうです。ある意味とてつもない国ニッポン!と胸を張れる成果(?)を上げ続けているわけですから、ただただ舌を巻くほかありません。この邦人受賞のニュースは既にあちこちで報じられましたので、ここでは横に置いておきましょう。
この「つぶやき」では化学ブログらしく、イグノーベル化学賞に絞って解説してみようと思います。
さてさて、その受賞研究やいかに・・・?
有機合成化学者が不要になる日
時は21xx年。あなたがある化合物が必要になったとしたらどうするでしょうか?まずはその化合物が売ってないか調べて、売ってなければ合成することになるでしょう。ではどうやって合成しましょうか?まずは既存の良い方法が無いか調べて、良い方法がなければ自ら合成法を考えますか?
いいえ、もうその必要はありません。構造式を入力するだけで後は人工知能が最適な方法を探し出し、自動合成ロボットシステム、オーガニックネット(仮)が合成してくれるようになったのです。そして全世界でそのシステムが稼働されたその日、オーガニックネットは邪魔な人類を殲滅するべく大量の化学兵器を作り始めたのでした。反乱を起こしたオーガニックネットに対する抵抗軍指導者であるジョン・コーリー(仮)の指揮下、反撃に転じる人類。人類の未来を賭けた戦いが今始まる・・・
やっぱりリンが好き
「リンの代わりにヒ素をDNAに取り込む生物が発見!?」…そうNASA(アメリカ航空宇宙局)の発表を聞いて、驚きの騒ぎになってからしばらく。サイエンス誌に掲載された論文には、専門家からのコメントの嵐で非難轟々。続報が気になるところでしたが、ついに決定的な反論が、NASAとは違うふたつの研究チームによってそれぞれ実証されたようです。
生き物はヒ素ではなくやっぱりリンが好きだった!
分子の聖杯カリックスアレーンが生命へとつながる
分子の聖杯のふたつ名にふさわしい化学構造を持ったカリックスアレーン。新たに開発されたカリックスアレーンは、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、表面にあるリジンだけを認識できるとのこと。
生命現象の舞台裏で活躍するタンパク質の立体構造をエックス線で解き明かすには、今まで結晶化の条件検討が最も困難な過程のひとつでした。今回のカリックスアレーンには、タンパク質分子の極性を相殺して、結晶化をうながす可能性も指摘されており、高い注目が集まりました。
立体構造情報はPDB(Protein Data Bank)より
2012年ノーベル化学賞は誰の手に?
京都大学・山中伸弥教授のノーベル医学・生理学賞受賞により本日はお祭りムード。大変すばらしいことですね。特に、受賞対象となった研究はお金をかけて集中してやった結果ではなく、奈良先端大学で研究に集中した結果。研究者が研究に集中できる環境づくりが重要ですね。ここ最近の日本、特に大学はそのような状況になっているのでしょうか・・・?とそれは置いておきまして。
明日の物理学賞も楽しみですが、化学情報を提供する本サイトとしては、やはり注目はノーベル化学賞!昨年はかなり大々的にこれでもか!と予想・候補者を挙げましたが、準結晶という完全予想外の結果が少し残念でもありました。今年はこれまでの予想候補者からもぜひ受賞していただきたいため、今回新しく加えた候補者も含めて、読者の皆様に受賞予想していただくことにしました!
では
「2012年ノーベル化学賞は誰の手に?」
(*参加にはFacebookアカウントが必要です)
研究開発の「前提」を見直すとはどういうことか
今回は体験談に基づき、研究・開発の目の付け処について短い記事を書かせていただきます。
ノーベル賞への近道?ー研究室におけるナレッジマネジメントー
あなたがポスドクとして海外武者修行に出向いた時のことを考えてみて下さい。着任後、いくつかのテーマを提示され、その中から選ぶようにボスから言われることでしょう。全く新しいテーマもあれば、前任者からの引継ぎのようなテーマもあります。そこでふと前任者が残した資料に目を通すと、随分苦労している箇所が目にとまります。しかし、それはすでにあなたの経験でちょっとした実験方法の工夫によって容易に回避できることがわかってるとしたら・・・
数ヶ月後そのラボでは難関と目されていたテーマをあっさりと片付けて、ゴットハンドとして崇められるあなたの姿がそこにはあることでしょう。今後のキャリアも順風満帆です。
化学物質でiPS細胞を作る
「山中伸弥先生、ノーベル賞おめでとうございます」
……という気持ちを共有したく思って、急いで記事を書き上げました。
ニュースで報道されての通り、2012年のノーベル生理学・医学賞に、ジョン・ガードン氏とともに、iPS細胞の山中伸弥氏が選ばれました。日本人の受賞、まずはとにかくめでたいことでしょう。
ケムステで記事にするならば(日本人でもそうでなくても)ノーベル化学賞の発表よりは早くないと意味がないと思って急ピッチで作成しましたが、当然ここはケミカル(chemical; 化学物質)に焦点を当ててトピックを紹介したいと思います。
ウイルスで遺伝子操作しなくてもケミカルでiPS細胞が作成できるようになるかも!?
「引っ張って」光学分割
図
(図は論文を参考に作成)
A Mechanochemical Approach to DeracemizationWiggins, K. M.; W. Bielawski, C. W.Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 1640 –1643. DOI: 10.1002/anie.201107937
光学異性体の分離は、1849年のパスツールによる酒石酸塩の光学分割から始まり、結晶化・不斉触媒・キラルカラムなど、様々な手法が提案されてきました。2001年に野依良治先生が不斉触媒の開発によりノーベル賞を受賞されているように、光学異性体の分離は現代有機化学における重要課題の1つといえます。
今回は、近年注目を集めるメカノケミストリーを用いて、BINOL(1,1'-ビ-2-ナフトール)のラセミ体を「引っ張る」ことによりS体のみを収率90%、光学純度98%と効率的な光学分割を達成したBielawskiらの報告をご紹介します。
【速報】2012年ノーベル化学賞発表!!「Gタンパク質共役受容体に関する研究」
ケムステでも大々的にFacebook連動予想企画を行ってきました化学賞、またもや見事に外しました・・・がっくし。栄えある受賞者は両者とも米国の研究者でデューク大学のRobert J. Lefkowitz (ロバート・レフコビッツ)教授とスタンフォード大学のBrian K. Kobilka (ブライアン・コビルカ)教授の2人です。
うーん、当てるのはほんとうに難しいですね・・・特に生化学系のものとなると、専門外になってくることもあり、どうにも予想しにくいという。
しかし今年の受賞対象となったのは、「Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled recepter, GPCR)」に関する研究について。
筆者のような門外漢でも少しは知識があるほどに有名な研究対象であり、生化学領域での「本命中の本命」と呼ぶにふさわしいものです。速報なので基本的な内容にとどまってしまいますが、簡単に解説してみたいと思います。
近況報告Part III
夏も終わり、食欲の秋がはじまりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。ノーベル化学賞の発表も終わり、一番実験がはかどるときですね。さて、前回4月下旬に近況報告させていただきましたが(近況報告Part II)、またまたいろいろ溜まりましたので、「つぶやき」らしく、適当なタイミングでまとめてワタクシこと、ケムステ代表の近況報告をさせていただきたいと思います。
ノーベル化学賞は化学者の手に
皆さんご存知の通り今年のノーベル化学賞は、全世界があっと驚く誰もが予想していなかったであろうGタンパク質共役受容体(G protein-coupled recepter, GPCR)」に関する研究でDuke大学のRobert J. Lefkowitz教授とスタンフォード大学のBrian K. Kobilka教授になりました。おめでとうございます!
受賞対象となった論文は生命科学における大変重要な発見について述べられており、膜タンパク質という難敵の構造と作用機構を明らかとした人類の偉業であることに疑いの余地はありません。詳しくはこちら。